子ども向けの健康管理システム運用時における睡眠判別精度の向上

摘要

ICTなどの技術発展により通信技術の向上したことに加えて，センサまたはバッテリの小型化が進み，手軽に身につけることのできるウェアラブル機器が発達してきた.例としてUP Move(Aliph社)やねむり時間計(オムロン株式会社)などのスマートフォンと連動し，運動消費カロリーの計算や歩数の表示，眠りの時間の計測など行うウェアラブル機器が開発され，一般の消費者に使用されている.これらは使用者の健康管理を促すものであるが成人向けの機器であり，大人と運動量が違い自身で健康管理が難しい子どもには向いていない.また，一般に幼児期からの睡眠を正しく識別することは，睡眠不足だけでなく，学習意欲が低下する事や，彼らの身体的，精神的発展に関する影響があるため重要である.さらに，幼児期の運動や睡眠の不足は肥満や高脂血症などの生活習慣病と深く関係していると言われている.そこで著者らは子どもの運動や睡眠時間の把握のために，加速度センサを用いた園内見守りシステムの開発を行ってきた.本システムの最終目標は，センサからの情報を子育てに有用な情報に変換して子供用健康情報として保護者，保育園内の医療従事者に提示し，子育てをサボートする事である.そのために加速度計から得られるデータを園児の活動ごとに行動識別(Activity Recognition)を行う.しかし，保育園内での実際の使用状況では，センサのずれ，落下などが発生し，子どもの動きを正確に取得した加速度でないデータが記録されてしまうことがある.特に，現在の行動識別では睡眠動作と園児へのセンサの付け忘れで起こるセンサ放置と睡眠行動とを誤分類する可能性がある.実際に使用瓌境を想定した保育園内での数日間の連続実証実験ではセンサの放置状態が多く見られた.そのため，行動識別の精度向上を目的とした睡眠とセンサ放置の判別が必要である.