ナノ秒パルスパワーを用いたがh治療のIn vivoおよびEx vivo実験

摘要

昭和56年以降，悪性新生物(癌)は日本人死因第1位となっている。現在の癌治療法には主に放射線治療法，外科療法，化学療法(抗癌剤)などがあるが，これらには患者や医療従事者の被爆，深刻な副作用，また患者の体への負担が大きいなどいくっかのデメリットが存在する。極短パルス電界の印加により，真核細胞にアポトーシス(細胞の自発的な死)が誘発されることが確認されている。そこでパルスパワーを用いた癌治療が確立すると，これらのデメリットを軽減できると期待される。我々は，発育鶏卵法を用いて癌固形腫瘍に2ns程度の極短パルス電界を印加するin vivo実験を行ってきた。この研究の最終目標は，パルス電界を固形腫瘍に印加することによる，アポトーシス誘発を中心とした，新たな癌治療法を確立することである。これまでに，パルス電界を印加して数日後の腫瘍の質量は印加していないものと比べて小さく，腫瘍の成長が抑制されることが分かった。しかし，そのメカニズムと最適なパルス電界印加条件が判明していない。そこで，パルス電界の印加効果を詳細に調査するため，in vivo実験に加えて，細胞懸獨液にパルス電界を印加するin vitro実験および発育鶏卵法を用いたex vivo実験系を確立し，これらを組み合わせた評価を行う。フローサイトメトリーを導入して，パルス電界印加の効果を検討した。