TLP 型浮体式洋上風車における制御時の不安定動揺に関する研究

摘要

浮体式洋上風車は着床式洋上風車とは異なり,基礎部が海底に固定されていないため，波浪や風により支持浮体が動揺する.それにより浮体の傾斜角度の変化によるローターの受風面積の変化,相対風速の変化等が発電特性へ影響することが考えられる.このような風車・浮体が連成する挙動の代表的なものにはネガティブダンピングがある．定格以上の風速の風が風車ローターに流入する場合に発電量を一定に保つように行われるブレードピッチ角制御が原因で浮体の復原効果が低下し，運動系の減衰が負になり，固有周期振動が励起されてしまう現象をネガティブダンピングと定義する．浮体が動揺することで風上方向にピッチ運動する時，風速が定格を上回る場合，ローターに流入する相対風速は風車が固定されている場合に比べて増加する．ここで風車は出力を一定に保つように,すなわち回転数を抑制するように,ブレードピッチ角制御を行うため，ローターで発生する風下方向へ押し戻すスラスト力は減少する．逆に後傾斜する場合は平衡点に戻る方向とは反対方向のスラスト力が増加する.この繰り返しによってピッチ運動が励起されてしまう. ネガティブダンピングが発生すると動揺振幅が大きくなるため浮体式風車の各部に与える負荷が増大する恐れがある．