三吉電機工場と支えた技術者

摘要

日本電機工業史の冒頭には、「わが国の電気機械工業は三吉電機工場に於いて始めて15kW直流発電機が製造されて以来今日迄約七十年の歴史を有して居り」と記されている(1)。まさに明治16(1883)年に創立された三吉電機工場は、電力関連電気機械工業の嚆矢である。国産技術の確立をめざし、多種多様な電気機械を製造し、かつ多くの優秀な技術者·起業家を育成·輩出し、電気機械工業の発展への貢献は大きい。しかしながら明治31(1898)年、不況期のなかで倒産し、15年の短命であった。渋澤元治が、「三吉正一さhといふ方は電氣機器の製作に就ては、我々が感謝しなければならぬパイオニアの方でありました。が惜しいことに經濟上の打撃で閉場しました。」(2)と評している。このように貢献の大きい三吉電機工場であるが、社史は存在しない。一方で、藤岡巿助が密接に関わったことから、その活動状況等については、電力産業史·技術史のなかで頻繁に言及されている。但し、三吉電機工場を対象とした網羅的体系的な調査研究はほとhど見受けられない。よって支えた技術者の活動を含む経年的な業績、発展要因や倒産要因、離職後の技術者の動向等について必ずしも明確ではない。