へモグロビン等吸収点波長の拡散反射率を利用した皮膚の色素量と等価散乱係数の同時イメージング

摘要

皮膚の分光反射率はメラニン，へモグロビン等の色素タンパクによる光の吸収や組織の細胞構造等の形態に関連する光散乱特性によって特徴付けられる.従って，分光反射率を解析することで，皮膚組織の生理•代謝に関する様々な情報が得られる可能性がある.これまでに我々は，分光反射率画像に対して重回帰分析と光伝搬解析法を適用することでメラニン，へモグロビンの皮膚含有量の計測とイメージングへの展開を行い，生体に対する応用可能性を確認してきた.この従来の評価方法では散乱特性を一定として代表値を用いているが，実際には部位や被験者により異なるため，代表値を用いることが計測値の誤差要因の一つとなり得る.一方で散乱特性は，皮膚組織の構造，水分量，脂質量に依存することが知られている.そのため，散乱特性を測定対象ごとに評価できれば，皮膚色素濃度イメージングの精度向上とともに，浮腫，熱傷，創傷治癒過程の評価など，皮膚科学分野へのさらなる応用が期待できる.本研究では，へモグロビン等吸収点波長である420, 450, 500, 584nmで取得した分光反射率画像により皮膚の等価散乱係数スぺクトルμ_s'(λ)を推定する方法について検討を行った.ヒト皮膚に対する光学的清澄化剤塗布実験による生体への適用可能性について実験的な検討を行った.