Spatio-temporal imaging analysis on action potential initiations in the mouse cerebralcortex responding to electrical single-pulse microstimulations

摘要

脊椎動物の脳内では無数の神経細胞によって形成された神経回路ネットワークを利用して膨大な情報が処理されている.その構造を解明するためは神経細胞の活動の時空間特性を知ることが重要であり，そのために動物試料を用いたin vivo実験や，摘出した脳の切片を試料とするin-vitro実験などが行われてきた.その際，神経細胞群の興奮を意図的に引き起こす手段の1つとして，試料内へ刺入した電極を用いた細胞外通電刺激が長年にわたり用いられてきた.また近年では，心臓ペースメーカー，人工内耳，脳深部電気刺激をはじめ，人工視覚や人工触覚などの神経補綴応用においても，複数電極刺激による神経活動制御に大きな関心が集まっている.この場合，個々の電極からの刺激によって直接的に誘発される神経興奮の時空間的範囲を知ることが，効率的かつ効果的な電気刺激を設計する上で重要となる。脳皮質内における微小電気刺激の効果範囲については，従来から，細胞外電位記録に代表される電気的計測手法を用いた検討がなされてきた.しかしながらそういった電気的計測では，刺激通電時のアーティファクトの影響のために，刺激電極近傍で刺激の直後に誘発される神経興奮を捉えることが困難であり，従って神経興奮範囲の推定精度にも限界があった.これに対し最近，光学的なイメージング技術を用い，その推定を試みた報告例がある.但し，これまでの研究では，活動電位発火の間接的指標である細胞内Ca~(2+)濃度変化や内因性光信号が用いられ,計測のサンプリングか数十frame/sec(2.5-31Hz)と比較的低かったために，単発の電流パルス刺激に対する細胞群の活動電位発火ダイナミタスを捉えることはできていなかった。また，微小電気刺激を用いた過去の研究結果との間で一致しない結論が得られており，現在でも電気刺激に対する神経興奮範囲については議論が続いている.そこで本研究では，膜電位感受性色素を用いた高速イメージングによって，単一電流刺激パルスに対する細胞群活動電位発火の時空間バターンを計測•解析した.