インフラシステム制御•監視用高信頼•高セキュア無線ネットワーク

摘要

持続的成長可能な社会•産業の実現に向けて，ライフライン（電力，水道，ガス，石油等）を提供するインフラシステム稼働の高効率化を目的とする，情報通信技術を用いた当該機器の統合運用が強く望まれている。機器の要所にセンサを配置し運用状況を把握すると共にァクチュエータにより遠隔操作で機器を統合運用するシステムを実現し同目的を実現する技術が近年提唱され関連する研究開発が鋭意進められている。同システムは機器の状態を把握するため比較的に近距離に配置される多数のセンサおよび少数のアクチュエータが構成する近距離ネットワークと，センサによって収集された各機器の情報を遠方に存在する集中管理局に伝送し，且つ集中管理局からの制御信号を受け取るゲートウェイを結ぶ中•遠距離ネットワークが混在する監視•制御ネットワークを構成要素に含む。近年の研究開発によって，インフラシステムの高効率稼動のために必要となる機器の状態を判断する情報は多量であり，数十から数百に亘るセンサによって個別の機器の状態を判断する"ビックデータ"という技術の有用性が着目されている。上記近距離ネットワークは多数センサからの情報を収集する必要上，無線通信技術の導入が好適である。一方，中•遠距離ネットワークの構築にはゲートウェイの数がセンサに比べて圧倒的に少ないのでこれまで通信伝送路の品質の観点から有線ネットワークが有望視されていた。しかしながら，有線ネットワークは伝送路であるケーブルが容易に外部者によって発見可能であるために悪意の侵入者によるネットワーク破壊•改ざhに対する耐性が極めて脆弱で，一度機能が損なわれると社会生活に対して深刻なダメージを与えかねない人々のライフラインに直結する，電気，ガス，水道，石油，化学原料等を供給する社会インフラシステム向けの監視•制御ネットワークへの導入に近年多くの問題点が指摘されている。無線ネットワークは伝送路の特定が極めて困難であり，無線伝搬路は不規則に時間的に変動する為に，外部侵入者に対して，ネットワーク破壊•改ざhの耐性を向上する可能性を秘めている。無線通信では送信された信号は自動的に空間に拡散し一部が受信されるという特性を持つので，送受信間で伝搬路が多重化される一方，該信号の内容を外部者から秘匿する技術の導入が不可欠となる。無線ネットワークは伝送路の敷設コストおよび保守コストが不要なため，特に通信信頼性が伝送路であるケーブルの性能に大きく依存し高品質通信を実現する為に髙コストのケーブルを必要とする有線ネットワークに比べて，社会インフラシステムの監視•制御ネットワークの導入•運用コストを大幅に削減する可能性を秘めている。本年度から3年に亘り活動する「髙セキュア•髙信頼無線ネットワーク技術調査専門委員会」では，社会インフラシステムの高効率運用を実現するための，高セキュア•高信頼無線ネットワーク構築に必要となる各要素技術からシステム•サービス技術までを網羅的に調査する。年3回の国内研究会を開催し同ネットワークに関速する，デバイス，髙周波回路，信号処理，符号，プロトコル等の最新研究開発成果を収集する。年1回国外アジア地区で開催する"Smart City Workshop"では，開催地国営研究機関による電波伝搬技術に関する発表および現地研究開発者による種々の社会インフラシステムの監視•制御ネットワークの実例の紹介を行い，日本研究者•技術者との意見交換を通じて髙セキュア•高信頼無線ネットワークの将来像を予測する。次章では本調査専門委員会の研究会•ワークショップで招聘予定の研究開発トピックについて数例を解説する。