ベタトル磁気特性解析による永久磁石モータの鉄損評価

摘要

本論文では、べクトル磁気特性を考慮した積分型E&Sモデルを用い、PMモータの磁気特性解析を行った。PMモータは小形で高効率な低消費モータとして注目され、その適用範囲は拡大を続けている。一方で、科学技術の発展によりエネルギー消費量は年々増加傾向にあり、地球温暖化を代表とした環境問題を深刻化させている。そのため、エネルギーの有効利用を目指した電気機器の高効率化や省エネルギー化の継続的な研究の必要性が一層高まっている。経済産業省が推進するトップランナー方式を代表とした電気機器の省エネルギー化の流れの中で、モータの高効率化は環境保全の観点からも極めて重要な課題であると考える。特に、モータの高効率化についてはモータ内部の損失を正確に把握することが必要であり、PMモータではステータコァ部で発生する鉄損が損失の多くを占めているため、磁性材料の磁気特性を活かした機器設計を行うことで鉄損の低減化を目指すことが重要であると考えられる。特に、コア材料である電磁鋼板の磁気特性は材料データとして、解析結果を大きく左右する重要な要因である。従来の磁気測定法では、ェプスタイン試験法?単板磁気試験法(SST)といつた一次元測定が主流で、測定方向の交番磁束条件下の磁気特性しか評価できず、本来べクトル量で表現されるはずの磁束密度や磁界強度などの磁気特性を把握しきれていない。それゆえ、磁気異方性をもつ電磁鋼板が多岐にわたり使用されているにも関わらず、それらの磁気特性を正確に考慮できていない。この技術課題を解決するため、べクトル磁気特性という評価方法が提案されている(2—5)。ベクトル磁気特性とは磁性材料中の磁束密度と磁界強度をべクトル量で表し、任意方向の磁気特性や回転磁束条件下での磁気特性を表した特性である。このべクトル磁気特性を磁気特性解析に考慮することができれば、磁気異方性を考慮できるのは勿論、磁気特性をべクトル評価できるため、解析結果から直接鉄損を計算することもできる。このベクトル磁気特性を考慮した磁気特性解析を行うことで、PMモータの鉄損分布をより詳細に評価し、低損失モータについての検討を行う。