状態不安とベクション強度の関係について

摘要

ベクション（視覚駆動性自己移動感覚）は観察者の行為や行動によって変化することが報告されている。妹尾ら(2016)は、ふちまで水が注がれたコップを保持することによりべクションが促進させることを見いだし、この手法をコップ水法と名付けた。この結果は水をこぼさずに物体のバランスを維持するという課題要求が精神的な圧力となり、それに伴いべクションが促進されると解釈された。ただし、この解釈について実証的な検討はなされていない。そこで、本研究ではコップ水法がベクションを促進した原因は状態不安（ある特定の時点や場面で感じている不安）の増進であるという仮説のもと、状態不安がベクションに及ばす影響を検討した。