千代田実験水路の縮尺模型を用いた河道条件の違いによる破堤拡幅速度

摘要

気候変動の影響により洪水の発生頻度に与える影響が危惧されるとともに，河川の氾濫による大規模な水害の発生が懸念されている．なかでも河川堤防の決壊による被害は甚大であるが，河川整備が進hだ今日でも，堤防決壊の事例が見られており，2012年7月の九州北部豪雨においても基礎地盤からのパイピングを主たる原因とする堤防決壊による水害が生じている1)．破堤原因には，越水や洗掘，浸透があげられ，過去の事例では，その8割以上が越水に起因するものであると言われている2)．これまで，越水破堤に関する研究は様々な方法で進められている．藤田ら3)は，破堤口の拡大過程について室内実験により現象を再現し，破堤口の拡大過程における形状特性や水理特性について検討している．辻本ら4)は，破堤口の拡大過程について，2次元浅水流を基礎とする河道・破堤部・氾濫域を一体的に扱った数値計算モデルを実験及び実河川へ適用し，再現性を確認している．また，実災害を時系列で詳細に観測することは困難なため，実スケールでの破堤現象について未解明な部分が多かったが，北海道開発局と寒地土木研究所では，平成20年度から平成23年度にかけて，十勝川千代田実験水路5)において実物大堤防を用いて，実河川と同様に河道からの横越流による破堤拡幅実験を行い，破堤拡幅機構や水理量との関係などを明らかにした6)．破堤進行に関し数多くの研究は行われているが，実物大破堤実験に関しては，実験施設の制約により限られた河道条件で行われているのが現状である．しかしながら，実河川における河道条件はさまざまであり，実河川への適用を考えた場合，これら条件をさまざま変えた実験の現象解析が必要である．