コバルトフェライトCo_xFe_(3-x)O_4(CFO)は,数あるスピネルフェライトの中でも特異的に高い結晶磁気異方性ならびに大きな磁歪効果を示すことが知られている.これらの特性を利用して,エピタキシャル格子歪みによりCFO薄膜に高ぃ垂直磁気異方性を付与する試みが主にパルスレーザー堆積法や反応性分子線エピタキシー(MBE)法を用いて行われている.最近,我々は反応性マグネトロンスパッタ法を用いて大きなエピタキシャル格子歪みを有するCFO薄膜を作製し,初めて10Merg/cm~3を超える高い垂直磁気異方性定数K_uを得ることに成功した.格子歪みのないバルクCFOにおける高い結晶磁気異方性は八面体配位Bサイト(Oh)に位置するCo~(2+)の電子状態がその鍵を握ることが知られているが,大きな格子歪みを導入することで高いK_uを獲得したスパッタCFO薄膜についても同様の議論が成り立つかは自明ではない.そこで本研究では,高いK_uを示すスパッタCFO薄膜について軟X線内殻磁気円二色性(XMCD)分光を行い,主構成要素であるCo,Feの元素選択的磁気モーメントを求め,さらに実験結果とLigand Field Multiplet(LFM)モデルとの比較を行うことで,カチオン価数およびサイト分布を調べた.
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