仏教僧院を起源とする中庭型集住体「バハ•バヒ」の所有について:ネパールのパタン旧市街地における共同的空間管理システムに関する研究

摘要

パタン旧市街地は、カトマンズ、バクタプルとともにネワール族の小国として発展した地域であり、仏教都市としての歴史も持っている（図1)。パタンはネワール族の伝統的な都市構成や住様式を現在もよく残している。中庭型集住体はその特徴の一つであり、複数の積層型住宅が中庭を囲hで建つ形式を指す。中庭型集住体には仏教僧院を起源とし、現在も「バハ」や「バヒ」と呼ばれる仏教僧院として本殿や祠を持つものもあるが、一般の住宅だけによって構成されるものも存在する。バハやバヒには仏教僧院としての運営体制があると同時に、居住空間としての共用中庭の管理体制も存在するしかし、著しい都市化の進行に伴い、旧来の共同的空間管理システムが変容し、それがうまく機能しない状況も生じており、現代社会に適合した共同的空間管理システムの再編方向を探る必要がある。そこで本稿では持続的な共同的空間管理システムのあり方に関する知見を得ることを最終目的として、中庭型集住体の共同利用空間である中庭および通路の所有関係について明らかにする。