Mn-Ir / Fe-Co / Pt / Co積層膜の垂直交換磁気異方性

摘要

反強磁性(AF)/垂直磁化強磁性（FM)積層膜に生じる垂直交換磁気異方性(PEA)は垂直磁化 方式のスピンバルブ素子への応用が期待されている.垂直磁化方式磁気ランダムアクセスメモリ（MRAM) ヘスピンバルブ構造を適用することで保磁力差型のMRAM と比較して熱擾乱や外部磁界への耐性が向上す るとされるため，PEA を増大し，実用段階へ引き上げることが MRAM の実現に際して必要とされている. PEA を示す AF 材料のうちで面内磁化方式のスピンバルブ素子に応用されているMn-Irに注目すると，FM 層として[Co/Pt]多層膜を用いた場合に AF/FM 界面に Pt 層やCo_(60)Fe_(40)層を挿入することで PEA の 大きさを表すー方向磁気異方性定数 J_k が増大することが報告されている.しかし，いずれの場合にも J_k は 面内磁化方式のそれに対して小さく，更なる性能の向上が求められている.我々はMn-Ir/FM = Fe-Co-Ni面 内交換結合膜のFM層組成依存性を系統的に調査し，J_k がFM層の結晶構造に強く依存し，特に体心立方 格子（bcc)の富Co FM層を用いた場合に大きな J_k が得られることを示した.そこで本研究では，垂直磁 化方式においても面内磁化方式と同様に FM 層の結晶構造と J_k が対応するか否かを明らかとするために Mn-Ir / Fe-Co/[Pt/Co]積層膜における PEA の Fe-Co 組成および結晶構造依存性を系統的に調査した.