局所的磁性粒子分散系クラスターの磁気特性シミュレーション

摘要

μmオーダー以下の局所的に磁性粒子が分散した糸においては，その分 散の違いによって磁気的相互作用が異なりそのヒステリシスに差異が生 じることが予想される.これは磁性粒子の分散によってヒステリシスを 制御できる可能性があることを示している.実際このような局所構造を もつ物質の例としてAlloy 600が挙げられる.Ni基合金であるAlloy 600 は室温で常磁性であるが，鋭敏化の進行に伴いその磁気特性が変化し， 強磁性を示すことが知られている.Fig.1は650°Cの温度条件でそれぞ れの時間，熱時効処理を施し鋭敏化度が異なるAlloy 600のヒステリシ ス曲線を示したものである.鋭敏化を特徴付けているのは結晶粒界上に できるCr炭化物とその周辺のCr欠乏領域であり，Fig.2に示すように鋭 敏化の度合いによってCr炭化物周辺のCr欠乏領域での溏度の分布が異 なっている.本研究では，ガウス分布を用いて磁性粒子が分散したクラ スターを構築し，その磁気特性についてモンテカルロ法を用いてシミュ レーションを行った.シミュレーション結果は，対応する実験結果と比 較し，その磁気特性について解析を行った.