老人病院から個室ユニット型療養病床への増改築プロセスに関する事例研究(2):2000 年以降の増改築と全体の総括

摘要

前稿ではA 病院の増改築の概要と2000 年までの時系列的な分析を行った。本稿ではその後の増改築の時系列的な分析と、約20 年に渡る増改築全体の総括について行う。既存建物に限界を感じ始めていた中で、2001 年に京都大学外山教授との出合いが契機となり、介護病床に個室ﾕﾆｯﾄｹｱを導入する事となる。具体的な工事内容は、全室個室のF 棟39 床の新築と、既存の介護病床（C･D 棟）の個室化と食堂等の整備である。F 棟の居室は11 ㎡程度の個室で、自立を促すために居室毎にﾄｲﾚが設置され、結果的に職員の排泄介助に割く時間の短縮に繋がったようだ。食堂・S.S.・浴室は病棟各階の中心に集約した形で設けられ、食堂は3 ㎡/ 床程度で2 面採光の明るい空間が確保された。F 棟39 床の新築に伴って、既存病棟では病床数が減少することになるため、C・D 棟では主に間仕切りの変更により6.4 ㎡ / 床の多床室から10 ㎡ / 床程度の個室への改築が行われた。C・D 棟は鉄骨造であったために、間仕切り変更等の工事が容易であったことも増改築が可能となった大きな要因だと考えられる。またF 棟の食堂に影響を受けてD 棟1 階では日当りの良い場所に食堂が設けられたが、既存病棟の他のﾕﾆｯﾄではまだ食堂は整備されていない。つまりこの時期は、個室ﾕﾆｯﾄｹｱを導入した病棟の新築に伴って、居室の個室化を中心とした既存建物の改修が行われた時期だといえる。