重伝建周辺地域における街道景観の特性と景観保全に関わる主体の実態に関する研究: 長野県木曽郡南木曽町三留野集落を対象として

摘要

本研究では、妻籠宿の周辺地域である三留野集落を対象として調査を行った。三留野集落に関して以下のことが明らかになった。　①三留野集落の街道景観の特性：住宅と外部空間の組み合わせによる街道景観を構成する基盤はエリアごとに特徴があり、「変化する街道景観」が街道全体の特性である。この特性の構成要素は、長期間の住民の暮らし方が表出した「緑の連続」と日常的な住民の暮らし方が表出した「生活の溢れ出し」である。②住宅の分類と住民の集落に対する意識の関連性：三留野集落の住民は景観の価値認識が高いほど集落に対する愛着と保全活動に対する意欲が高くなり、それは伝統的住宅、準伝統的住宅、改修・建て替え住宅の順に相関が強い。③住宅の維持管理に関する課題：三留野集落の住宅は空き家の増加により維持管理の体制が整っていないが、修繕に関しては地元の工務店との結びつきが強い。また、大工の減少により維持管理の体制が整っておらず、重伝建周辺地域の大工の減少は妻籠宿の伝統的建築の維持管理の衰退にも繋がる。