利根川上流域湯檜曽川における窒素の流出と窒素飽和現象の検討

摘要

首都圈2700万人の水源である利根川水系の上流部は，淸涼な渓流にもかかわらず群馬県内では窒素濃度が高いと報告されている.また群馬県内および首都圏の窒素降下量を比較した調査から，広範囲にわたる窒素飽和現象の発生の可能性も報告されている.窒素飽和現象を把握するためには、渓流水による窒素流出量と降雨による窒素降下量の関係について検討する必要がある.そこで本研究では.利根川最上流域に位置する湯槍曽川を対象として，降雨及び河川の水質分析を行った.また並行して湯檜曽川の水位を測定し，河川の流量算出を試みた.その結果，窒素降下量は約47t(12.5kg-N/ha)であり，窒素飽和が起こるとされている10kg/ha/yを超える高い値であった.また窒素流出量は約45t(12.1kg-N/ha)であり，窒素降下量とほぼ同量であった.群馬県内の利根川上流域では、窒素飽和の状態である可能性が示唆された.