ウィーン分離派館の成立とトップライト

摘要

J.M.オルブリヒ(1867-1908)の設計で1898年に建設されたウィーン分離派館(Wiener Secession 、以下、分離派館）は、19-20世紀転換期ウィーンの芸術·文化を象徴する建築作品の一つとして知られる。この建築の建築史的な意義は、大別すれば次の二点に見いだせよう。一つはファサードに集約された造形や装飾の斬新さである(①)。中央に冠せられた金のオブジェに代表される独特な造形は'ウィーン版アールヌーヴォー「セセッション」の代表例としてこれまで注目されてきた。もう一つはテンポラリーな展覧会に対応可能な中立的な展示空間の提示である(②)。この点で分離派館は、いわゆるホワイトキューブの先駆けとしての意義をもつ。