「斎藤助教授の家」原寸模型における色彩の再現

摘要

1.はじめに　2017年7月から東京国立近代美術館で開催された「日本の家」展では、清家清設計の「斎藤助教授の家」（1952）の原寸模型が制作、展示された。本稿では、この模型の制作過程のうち、仕上げおよび色彩の再現について紹介する。清家清は建築に関係する様々な分野で執筆活動を行ったことで知られるが、1950年代には建築の色彩について研究していたと考えられ、淸家が編集した『生活と色彩』（修道社、1957）では、東京工大清家研究室が建築に関わる章を担当し、建築に使われた色彩の歴史や、公共建築および住宅の色彩計画に加えて、木材や塗装の色彩にいたるまで詳しく述べられている。またその卷頭では、「斎藤助教授の家」を「日本の伝統的な素材の美しさを生かした例」として、カラー写真で紹介していることから、この住宅においても素材や色彩は設計の要点の一つであつたと考えられる。本稿では、各部の仕上げおよび色彩の再現過程とともに調査で得られた情報も合わせて紹介することで、この作品を通して清家清の色彩に対する考えに迫りたい。