横浜中心部における融資耐火建築「防火帯建築」群の所有者意識の特徴:戦災と接収を受けた都市の復興過程に関する研究 その３

摘要

本研究では規模別類型（ⅠⅡⅢ）整理による所有者意 識分析を試みた。その際規模ともある程度相関を持つ形 態類型（A～E）による考察を加えた。Ⅰでは所有者の利 活用関心は高いものの、家族の将来計画を含む課題への 対応が必要である。A 型を中心にシェア利用への関心が高 く、利活用可能性があることがわかった。Ⅱでは少人数 共同所有での合意形成上の課題がある一方でC型を中心に 共同建築ならではの空間融通例もみられ、活用可能性が ある。Ⅲでは所有者は比較的利活用に意欲があるが、そ の規模から空室絶対数が大きく、D 型を中心に複数戸一 体活用、敷地建物全体の利用等が有効であろうといえる。 現状積極的な活用にいたっていない背景には、相続 （非積極的な取得）での利活用関心の低さ、所有者単独 では解決が難しい課題の存在、共同所有者間の合意形成 の難航等の問題が複合していることもわかった。このた め、支援の仕組みや支援組織により所有者の課題に合わ せて、所有権を維持したままのサポート、所有権移転の 促進といった段階的運営支援も有効と考えられる。