電子工作愛好者向けセキュリティゲートウェイの構築 （第一報：設計と実装）

摘要

近年、電子回路を活用したものづくり（いわゆる電子工作）を楽しむ人々が増えている。特に2012 年初頭に登場したボードコンピュータ「RaspberryPi」は、UNIX をOS とする手のひらサイズのコンピュータを3000 円程度の支出で入手可能にしたため、発売開始後の１年間で100万台以上出荷するベストセラーとなった[1]。これまでも、マイクロコントローラにセンサやアクチュエータを接続してものづくりを楽しむ電子工作の世界と、インターネットが作り出した情報通信の世界を融合する方法は存在したが、RaspberryPi によってこれが一気に普及した。しかし、このことは電子工作の世界がインターネットからセキュリティ上の脅威を直接受ける事態になったことも意味し、電子工作を楽しみたいだけの者にも、多くの場合不本意ながらインターネットに接続する情報通信機器を管理する技術者と同等の情報セキュリティに関する専門知識と運用技術を求めることになった。。そこで、情報通信分野の専門家ではない大多数の電子工作愛好者が簡単に設置して運用できる「セキュリティゲートウェイ」を提案し、情報セキュリティ上の脅威を簡単かつ持続的に低減する機構RaspberryGuardian の提供を目指す。なお、本報での議論は、議論を簡単かつ明確にするため、RaspberryPiのみを対象として展開しているが、その大部分は、RaspberryPi と同様の構成の小型ボードコンピュータにも適用できる。