一般化収束論に基づく非定常熱伝導・固体力学連成マルチスケール解析

摘要

繊維強化樹脂や合金・セラミクス材料に代表される複合材料は，変温環境下において製造・利用されることが多く，それらの熱と力学の連成現象を予測することは重要である．例えば，繊維強化熱可塑性樹脂の成型においても，繊維束に樹脂を流し込み，冷却の後，固化するといった一連の熱・機械連成プロセスが存在し，これが製品内部に発生する残留応力の大きさに強く影響を与える．ところが，複合材料の場合では，ミクロ構造の幾何形状や構成材料の物性の違いに起因した非線形な相互作用が，対応するマクロ熱・機械連成特性の予測を困難させるばかりでなく，理論的基軸となる均質化法はミクロ挙動の非定常性を想定していないため，熱・機械連成問題を包含するミクロ現象の過渡過程を予測することができない．そこで本研究では，Yang ら(1)が提案した熱・機械連成Incremental variational framework と我々が独自に再定義したHu-Washizu の熱・機械連成汎関数を同時に考慮し，得られた汎関数に数学的均質化法の基盤理論である一般化収束論(2)を応用することで，熱・機械連成問題の取り扱いが可能な新規マルチスケール解析手法を提案する．なお，本手法の妥当性は，ミクロ構造解析のみ行う数値材料試験とミクロ・マクロ構造解析を連成させるFE2 によって検証する．