結晶塑性有限要素法によるHCP双結晶の格子ひずみ解析

摘要

金属材料の微視的変形機構を考慮した力学解析手法は，高精度な構造設計や効率的なプロセス設計を実現し得るため，固体力学と材料科学の両分野において利用が拡大している．特に結晶塑性構成則を用いた有限要素法は，多結晶体の不均一変形といった問題へも適用可能であることから，構造材料や金属間化合物等の様々な材料系へ応用されている(1)～(4)．しかしながら，このような解析では，構成式中の材料定数が不適切である場合には，定性的にも現実とは全く異なる解析結果が得られるため，材料定数の同定が極めて重要である．結晶塑性構成則は単結晶の挙動に基づき金属材料の変形挙動を表現するものであるが，多結晶体中の各結晶の挙動は，転位の平均自由工程に影響を及ぼす微視構造や変形拘束等に影響を受けるため，単結晶の実験より得られる材料特性とは一般的には異り，材料定数を巨視的挙動に基づき一意に同定することは容易では無い．