新設開口を伴う大規模改修に向けた既存壁式プレキャスト鉄筋コンクリート構造集合住宅建物の耐震性能評価その3 WPC 構造建物の地震時挙動に及ぼす新設開口の影響と一改修事例の提案

摘要

標準設計された壁式プレキャスト鉄筋コンクリート（WPC）構造集合住宅建物に対して，計画的に必要と考えられる平面上対象位置にある2 箇所の戸境壁板に幅950mm 高さ2100mm の新設開口を設けた解析モデルを作成し，開口新設の影響を評価した。1 階または2 階にのみ開口を設けた場合では，保有水平耐力の低下率は3%以下で，崩壊形は出入口上部のせん断破壊を伴う1 階壁脚部接合部の破断によるロッキングであった。これは，開口新設前と同じ崩壊形である。連層で開口を設けた場合には，開口脇の耐震壁がそれぞれ独立してロッキングし，保有水平耐力は12%低減した。これに対し，連層開口のうち，4 階あるいは5 階のみに開口を新設しない場合，同階の耐震壁が境界梁の役割をはたし，崩壊形は開口新設前に近く，保有水平耐力の低下は1-10％に低減できることを確認した。