屋外実験によるコケ植物の生育状況と夏季降雨後の熱・水収支特性の分析

摘要

本実験では、生育環境の異なる3 種のコケ植物について生育状況の変化と夏季降雨後における熱・水収支特性を分析した。得られた結果・知見を以下に示す。1）コンクリート付着コケ(日陰)・スナゴケ試験体(日向)において、時間経過に伴いコケの成長・増加が確認された。1 年間経過した時点で、それぞれ37％,78％の最大含水量の増加が確認された。2）3 試験体ともに降雨後の蒸発効率は1 日経過した時点で午前中に1 程度となり、それ以降低下する傾向がある。スギゴケ試験体では、降雨後4 日間蒸発は持続し、蒸発効率は同程度の値となった。コンクリート付着コケ、スナゴケ試験体は降雨後2 日目以降、蒸発効率が0 近くまで低下した。3）スギゴケ試験体(日陰)は、砂層が十分に保水するため降雨後も蒸発が持続し、コケ表面温度は気温よりも低くなる。コンクリート付着コケ(日陰)・スナゴケ試験体(日向)は蒸発効率がほぼ0 に低下し、コケ表面温度は気温よりも高くなる。スナゴケ試験体は日射量に対して保水量が限定的であるため、日射量が大きくなるにつれてコケ表面温度は上昇し、気温+30℃近くまで上昇する。次報では、コケ植物を実際の都市に適応した際の熱環境予測を行うモデルの開発に向けた物性パラメータ(含水状態の変化に対応して変動する物性値)の推定結果を報告する。