農民の生活から見るマジアの拡張に関する建築論（１）カタルーニャの伝統石造民家マジアの修復・再生に関する研究

摘要

本研究はスペイン、カタルーニャにおける伝統的石造民家マジアに関するー連の研究1) のー部をなすものである。　スペイン、カタルーニャ地方に多く建つ伝統的石造民家であるマジアは、住居と農地開発のための、森林、牧草地、耕作地などを包括する、複合的な集合体である。マジアは、過去の農業や畜産、また農民の遺産の集積を拾い上げ、歴史的な発展の痕跡を明らかにしてくれる。現存するマジアを理解するためには、その起源までさかのぼり、その後の歴史や連続的発展について把握する必要がある。自身もマジアで暮らしていた作家Josep Pla はこう言葉を残している。「土地についてのその居住は、決して少しの気まぐれにもよらない。それは有用性の理由によって弁明され、ー般に多様である」。既往の研究2) では、「用」という概念を用いてマジアの空間の多様性を論じた。抑圧された厳しい環境の中で「用」を満たすべく変化してきたマジアであるが、Pla の言葉は単に機能を満たすための建築を指すものではない。そこには機能的な必要性を超えて、生きた農民の日常性の視点が介在しているはずである。そのような農民の生きた「生活」の視線を「用」の中に加える事によって、よりマジアの建築の本質に肉薄する事が出来るのではないかと考える。