山村集落の屋敷立地と棚田の関係: 新川・田簧地区における民家の地域資源化のための基礎的研究その12

摘要

生活用水は，求められる清潔度に応じて明確な利用秩序があり，屋敷内部の空間は，それに対応した作りになつている。生活用水にはー定の水質が必要であり，農業用排水との混合は避けられる。分田では同ーの井堰を共用するが，農業用水と生活用水が別径路で分配される仕組みが存在している。つまり，井堰が基幹水路となった合理的な水系システムを構築することで，水の複合利用が可能となり，その結果，棚田の合間に屋敷が並ぶという独特な空間構成が形成されている。このように屋敷の立地は，それ単体で成立しているのではなく，農業が成り立つシステムからも影響を受けている。