旧本庄商業銀行煉瓦倉庫の保存改修 その1 絹産業からみる繭担保倉庫の地域的価値

摘要

周知の通り、明治政府の殖産興業政策のもと、日本の絹産業は全国的な発展をみせた。なかでも上武( 埼玉県北部から群馬県南部一帯を指す) は、その代表的な地域である。明治中期の絹産業において、担保繭を保管するための銀行保有の倉庫という特殊なビルディングタイプが生まれる。本報告は上武に位置する、そのうちの一つである埼玉県本庄市の旧本庄商業銀行煉瓦倉庫( 以下、本庄煉瓦倉庫)を対象に、銀行の設立から融資の仕組み、また繭担保倉庫が生まれる背景について述べる(3 節)。また、繭を保管するための倉庫としての機能と技術について述べる(4 節)。製糸金融における繭担保の研究については、近年も経済学の分野で継続的な研究が行われている。本報告では、特に製糸金融という経済面と明治中期の煉瓦造という技術面の両者から、繭担保倉庫の埼玉県本庄市という地域における価値について考察を加える。