『営業案内』から見た わが国における住宅割賦販売の嚆矢・日本電建株式会社

摘要

近年、一般向けの住宅金融手法のひとつ「割賦販売」の先駆的主体であった日本電話建物（株）（その後、日本電建（株）と改称、以下、同社と略す）に関する研究が現れ始めている。例えば内田（2013）は同社の社長・平尾善保（1888-1958）の略歴、彼が同社の刊行物で展開した持ち家志向や住宅啓蒙活動をまとめている。また、高橋（2011）は同社の戦前期における組織・役員・営業拠点の分析をし、里井ほか（2013）は同社の刊行物の誌面内容の変遷を整理することで、それぞれ同社の活動実態を解明した。ただ、3 者とも高度成長期にかけての同社の営業内容を経年的・通史的には把握しておらず、同社が社史を編纂することなく発展的に解消（現在は大東建設（株））してしまったため、高度成長期の住宅供給の一翼を担った同社の試行錯誤の過程は未だ明らかではない1)。