郡是製絲株式會社における女子寮舎の木構造について－近代製糸産業の形成過程に関する建築史研究その15－

摘要

同社の女子寮舎の木造構法は、大正期の多くの期間、筋違や火打材・金物が意識的に使われていたものの十分ではなく、現場任せであったようだ。大正末頃にそれらが図面上に具体的に示され、構法は一気に進化した。その背景には次のような状況が重なったことが考えられる。①関東大震災に引き続き、同社のおひざ元である但馬地方に相次いで大地震が起こり、耐震策が早急に求められたこと ②市街地建築物法適用地域への分工場の新設8③昭和2（1927）年の寄宿舎取締規則に備えて安全・衛生対策を念頭に置いていたことなどである。