水銀イオンとDNAチミン塩基の塩基対形成能を利用した簡易水銀分析手法の開発

摘要

水銀（Hg)は，水道水質基準が0.0005mg/Lであることからもわかるように極めて毒性の高い金属 であり，毒性の蓄積により脳，心臓，腎臓，肺，免疫 系に害を及ぼすことが知られている.環境水中では まれにHg鉱床地帯を流れる河川でHgが高濃度に なるほか，工場排水，農薬，下水中にHgが検出さ れるなど，大気，水，土壌中に広く分散している元 素である.また，Hgイオン（Hg~(2+))は最も一般的で安 定したHgの化学種であり，Hg~(2+)の環境モニタリング の需要は増加している.現在Hg~(2+)は，ICP法や原 子吸光光度法で測定されている.しかしながらこれ らの方法には，装置が高額である，オンサイト分析 できない等の課題がある.そこで本研究では，ポリチミン塩基一本鎖DNA(PolyT)中のチミン塩基が， Hg~(2+)と塩基対（T-Hg~(2+)-T)を形成しPolyTが折り畳 み構造になること，また，蛍光色素SYBR Green I (SG)が，PolyT中のハイブリダィゼーション (T-Hg~(2+)-T)部位の近傍にインターカレートして蛍光 を発することを利用して，簡易Hg~(2+)分析法を開発 する事を試みた.