左胸部に発生した乳腺紡錘細胞癌との鑼別を要した脱分化型脂肪肉腫の1例

摘要

悪性軟部腫瘍の中でも，脱分化型脂肪肉腫は比較的まれな疾患である.その中でも，胸部に発生した脱分化型脂肪肉腫の報告は限られたものとなっている.患者は61歳，女性.CT検査で左胸部 のリンパ節腫大認め当科初診となった.触診で腫瘤は触知しなかった.マンモグラフィでは乳腺と離 れた部位に境界不明瞭な腫瘤影を認めた.超音波検査では左胸部に内部低エコーやや不均一な円 形腫瘤影を認めた.CT, MRI検査で左胸部に20mm大の腫瘤様構造を認めた.針生検を施行し, 乳腺化生癌（钫錘細胞癌）疑いとなった.腫瘍摘出術を施行した結果，最終的病理学診断は脱分 化型脂肪肉腫となった.切除断端は陰性であった.術後補助療法は施行せずに経過観察中である. 本症例は，胸部に発生した腫瘍の診断に難渋した1例であり，多少の文献的考察を加えて報告する.