キリバス共和国クリスマス島における英米核実験—太平洋の核軍事化と先住民共同体

摘要

キリバス共和国ライン諸島に位置する世界最大の環礁クリスマス島は，魚が豊富に生息するラグーンを持ち，人口過密の首都圏タラワ環礁が海面上昇の危機にさらされるキリバス共和国にとって，将来を支える土地である.政府は数年前から，ゲームフィッシングなど持続可能な観光を促進すベく，水?電力?通信インフラの整備をはじめとするクリスマス島の長期開発計画を立てている.キリバス共和国は漁業を通して日本とも関わりが深く，冷戦期に核実験が行われたクリスマス島とモールデン島近海は豊かなマグロ漁場として知られ，日本の漁船も操業してきた1),本稿では，2016～19年にクリスマス島で行ったインタビュー調査に基づき，太平洋の核軍事化が島民の生活に及ぼしている影響を考察する.