光反応性樹脂および表面改質剤による表面自由エネルギー制御を利用した表面改質

摘要

繊維やプラスチック，木材，金属等の材料表面を改質する手法として，各種エネルギー線照射などによる物理的表面改質や，薬品処理，蒸気処理，グラフト化，表面改質剤の添加などによる化学的表面改質が挙げられる．これらの手法を利用することで，材料への撥水撥油性，接着性，防汚性，帯電防止性，すべり性などといった新たな表面特性を付与することができる．特に，表面改質剤の添加による撥水撥油性については，アンテナ，電線等への着雪防止，船舶航行時の抵抗低減，自動車のウインドウグラスへの水滴付着や曇りの防止などに適用されている． 材料が撥水性や撥油性を示すことは，材料の表面自由エネルギーが低くなっていることに由来する．シリコーン系化合物やフッ素系化合物などは低表面自由エネルギーを示す代表的な物質であり，表面改質剤として広く使用されている．また，表面改質剤は少量の添加で非常に大きな効果を得られることから，工業的に簡便な手法として認められている．しかし，撥水性や撥油性に表面改質された材料は粘接着剤との密着性，塗料の濡れ性なども低下させるため，他の被着体との接着強度が十分に得られない場合や，印刷が困難であるなどの問題を生じることがある．しかし，撥水性や撥油性に表面改質した材料表面において，所望の部分のみの表面自由エネルギーを選択的に高くすることができれば，材料表面は部分的に親水性や親油性を示すことになり，必要な部分のみの接着性や印刷性を向上することが可能となる． 本稿では，新たに見出した表面改質現象のメカニズムと，これを実現するための表面自由エネルギー制御型光反応性材料について説明する．また，この表面改質現象を精密印刷技術や微細三次元構造作製技術に応用した例について報告する．