紙・機能紙

摘要

BC3世紀頃に中国で誕生したとされる紙を作る技術は2000年以上の歴史をもつことになるが、水中に分散させた繊維を脱水過程で絡ませシート化するという製造の基本的原理はほとんど変化していない。しかし紙は製造技術と製品の進化という方向で時代の様々な要素の影響を受けて変化し続けている。 繊維学会60周年に際して過去10年（1994～2003）ほどの製紙産業と製紙技術を取り巻く変化の特徴を要約すると、製造技術を取り巻く資源·エネルギー·環境問題などのいわゆる地球環境問題と社会の情報化や消費市場の多様化の進展に伴い生じた市場からの新機能の付与による新製品の要求がある。 本稿の〈紙·機能紙〉は過去の繊維学会記念特集号には見られないユニークな題目であり、名称の一方の〈紙〉を日本製紙連合会の分類による紙·板紙とすると木材パルプを主原料とする情報記録用紙、新聞用紙、衛生関連用紙、板紙などの大量生産型の紙製品とその製造接術であり、他方の〈機能紙〉は原料が木材パルプに限らず各種の先端繊維や非木材繊維などを原料とし、特殊な機能の発現を目的としたシートであるがために個々の製品の生産量は少ない。 すなわち社会や生活の多様化により出現した特殊な機能を保有する紙が機能紙であり、雑種紙に分類される。 本稿では過去10年間の紙と機能紙の製造技術と製品の進化を、その背後にある産業の特徴と関連付け、基礎的な紙の科学の概要を中心に、個々の研究の詳細には立ち入らずグローバルかつマ－クロな視点から記したい。