展伸用アルミニウム合金の溶解#12539;鋳造における最近の技術と課題

摘要

展伸用アルミニウム合金は加工#12539;熱処理によって様々な性能を発揮するため，輸送，電気，建築．食品などの産業分野で幅広く使用されている。国内での生産量はここ数年230万トン前後で推移しているが，近年の温暖化対策の一環として軽量化に有利なアルミニウムを用いた製品開発が進められ，今後の需要増加が期待できる金属のひとつである。 その一方で，缶材に代表されるように既存アルミニウム素材の薄肉化，広幅化への要求や，環境負荷不可低減に向けての社会的な連動の高まり，さらには製造コスト削減に対する要求もあり，展伸用アルミニウム素材メーカーを取り巻く環境は年々厳しくなっている。 鋳造工場においては，省資源や原料コスト削減のため，溶解原料に占めるスクラップの割合が増加し，粗悪な原料をもとに，環境に配慮しながら高品質の鋳塊を効率よく製造する必要性が増している。 このため，溶解では燃料消費量やNO_xなどの放出量，溶解ロスの削減に主眼を置いた炉体構造や原料装入方法，溶解雰囲気管理，加熱方法に関する技術開発が継続的に行われている。 溶湯処理では溶湯からの有害不純物除去に用いる塩素ガスの使用量低減を目的として，処理効率の向上やフラックスによる代替処理に関する技術が開発されているはか，新しい溶湯ろ過システムや溶湯清浄度の評価技術の研究も進められている。 一方，鋳造ではスラブ鋳造におけるEMC鋳造法，ビレット鋳造における気体加圧ホットトップ鋳造法の開発以後，革新的な技術は少ないが，要素技術の最適化による鋳塊の大型化や同時鋳込み数の増加，鋳造不良部の低減など鋳造生産性の向上を目指した技術に進展がみられる。 本報では，展伸用アルミニウム合金の最近の溶解，溶湯処理，DC（Direct Chill）鋳造技術をレビューし，今後の技術課題について私見を述べる。