この時代に科学を学ぶとは

摘要

科学を学ぶことには，主に二つの意味があると考える．一つは知識としての必要性である．遺伝子，ゲノム，原子力，ダイオキシンなど，科学の用語は否応なく日常生活に氾濫している．日頃科学を扱わない人にとっても，刻々と進化を遂げる科学の世界は遠い存在ではなくなった．もはや，文系#12539;理系の区別は大学入試科目上の区別に過ぎないとさえいえる．現代人には，科学の知識を前提とした問題解決力が要求されているのである．そして，生活する者として，科学的知識を基に判断を迫られるような状況はすでにきている．日々の食材にしても，遺伝子組み換え食品か，添加物は入っているかなどを意識する．ゴミの捨て方にしても，リサイクルを考え，また，何がダイオキシンを出す物質かと考える．さらに，医療技術の進歩により様々な技術が提示され，療法の自己選択を迫られることもある．これらはすべて私達の生命に直接かかわる問題である．