DAΦNE φ-factoryにおけるK中間子窒素原子のX線観測

摘要

原子は古典的かつ単純に言えば、電子が原子核を中心、に回っているものである。 原子核と電子との相互作用はクーロンカであるため、電子以外の負電荷粒子を電子と置き換えて、原子核とからなる“原子”を作ることができる。 このような“原子”はエキゾティク原子（Exotic atom）と呼ばれ、これまでに、ミューオンやパイオン、K中間子、反陽子などを伴うエキゾティク原子の生成に成功している。 これらの粒子は電子よりも重いため、エキゾティク原子から見ると、電子と置き換わった軌道は高い励起状態である。 そのため、普通の原子同様、励起状態から低い状態へと、X線を放出しながら遷移していく。 ユキゾティク原子の実験は一般的にこのX線を測定することによって行なわれる。 エキゾテック原子の研究は、粒子の精密質量測定やカスケード理論の構築に役立っ。 パイオンやK中間子などのハドロンの場合、低エネルギー領域での強い相互作用の研究にも利用される。 本稿ではK中間子と窒素原子核からなるエキゾティク原子（以下、K中間子窒素原子）のX線の測定実験に関して述べる。 この実験はイタリア原子核研究機構フラスカーティ研究所において行なわれた。 我々は気体標的を用いてK中間子窒素原子から生じるX線（n＝7→6,6→5,5→4遷移）を初めて観測することに成功した。