蛍光偏光法による木綿繊維の微細構造解析

摘要

蛍光分子を観測子（プローブ）とし、その蛍光を利用する蛍光プローブ法の歴史は古く、多くの分野で研究が行われてきた。 蛍光がどのように、あるいは、どの部位で観測されるかどうかだけでなく、発した蛍光の偏り（偏光度）が解析される場合も多い。一般に、蛍光分子の吸収および発光は非常に指向性の高い線振動子による電子遷移であるため、吸収に高い選択性があり、蛍光も高度に偏っている。 この蛍光の偏り、すなわち、偏光性を解析することにより、分子の運動と配向に関する知見がえられる。 分子の運動については　Weberらが60年も前に研究を行い、球状たんぱく分子の活性部位の数や回転運動の速さが考察されている。西島らは合成高分子に蛍光分子を結合し分子鎖の運動の解析を試みた。 さらに西島らは高分子固体中に蛍光分子を分散させ、高分子固体の非晶領域の分子鎖の配向について、配向の度合いと配向の分布に関する知見がえられることを明らかにした。 Steinらも、高分子非晶鎖の配向を解析するための分布関数の高次のモーメントの重要性を指摘し、蛍光偏光法の研究を行っている。