車速感応型適応アンテナ

摘要

移動体通信下り回線受信側において，特に高速フェージング時に適応アンテナを使用すると，受信信号が非定常となり，アンテナ重みの更新が正確に行われないなどの問題から通信性能が著しく劣化する．本論文では，この問題を解決するため，車速感応型適応アンテナ（VSR-AA）を提案し，仲上－ライスフェージング環境下における性能を計算機シミュレーションにより評価している．提案のVSR-AAにおいて重要な役割を果たす車速感応型VCOを動作させるには，直接波の到来角を知る必要があるが，適応的に形成されるビーム特性の最大利得の方向から簡単に，しかも十分な精度で推定できることを示す．また，提案のVSR-AAを用いることで，ライスファクタ5.0，アンテナ素子数8，f_DT（最大ドップラー周波数とデータシンボル長の積）＝0.05など条件で，従来の適応アンテナに比べ，BER＝10~(2)におけるE_B/N_0で約10dBの改善が得られることを示す．更に，f_DTが大きくなるにつれ従来方式のBER特性は大幅に劣化するのに対し，提案方式ではほぼ一定のBERが得られ，高い通信品質が維持されることを明らかにする．