B-Spline関数による微分抽出と伝達関数推定

摘要

この論文において，我々はB-Spline関数を試験信号とする同定の一手法について論じる．この信号を対象系に入力したときの応答出力をB-Spline応答とする．最初に，B-Spline共役関数を用いて，B-Spline応答の観測値から，その微分の推定値を求める方法を提案する．次に，推定したB-Spline応答の微分から，伝達関数のパラメータを推定する．B-Spline関数をscaling関数に採用すると，一つの多重解像度解析空間列を得る．そして，この場合には，容易にwavelet関数も得られる．同じように，それらの共役なscaling関数とwavelet関数の近似関数を得ることができる．得られた，共役空間の中でB-Spline応答の微分の近似関数を構成する．この提案微分近似関数の展開係数はB-Spline応答の微分とB-Spline関数の内積で表される．この内は，部分積分を用いれば，B-Spline応答とB-Spline関数の微分の内積で置き換えられる．すなわち，B-Spline応答の観測値のみから，それらの微分が得られる．提案する微分推定値と，伝達関数を与えて解析的に計算した正しいB-Spline応答の微分との誤差と観測雑音に対する影響について検討し，それらの伝達関数推定への適用過程について示す．数値例により，提案手法の妥当性と有用性を示す．