摩擦撹拌作用によるADC12/SS400材料間の接合

摘要

省エネルギー化による地球環境保護のために，輸送機器には軽量化が強く求められており，構成部材への軽量材料の適用が検討されている．特に輸送機器の代表である自動車車体には，各種アルミニウム材料の適用の可能性が高い．ただし，高強度の要求される構造主体には依然として鉄鋼材料が用いられることから，軽量化の実現に対し，アルミニウム材料と鉄鋼材料という異種金属材料間の接合が，新たな技術課題として浮上している．機械的·物理的諸特性が大きく異なり，また溶融反応により脆弱な金属間化合物相を形成する両材料間の接合は，多くの困難を伴う．実用レベルにある両材料間の有効な接合法には，ロウ付けや機械結合などが挙げられるが，これらは機械的強度における信頼性や生産性などに難点がある．これに対し最も代表的な接合法である溶融溶接では，界面における金属間化合物相の形成が避けられず，高信頼性の接合体創製は通常困難とされる．両材料間の有効な接合法が模索される中で，固相状態で連続した接合の可能な摩擦撹拌接合適用の可能性が吟味され始めた．同法はすでにAl，Mg，Ti各合金などの同種金属材料間の接合に適用され，新幹線，宇宙用ロケット等におけるアルミニウム合金構造材の接合では，すでに実用の域にある．また無酸素銅／アルミニウム合金，低炭素鋼／クロム合金などの各種異種材料間の接合にも適用され始めている．ただし，輸送機器への適用が期待されるアルミニウム／鉄鋼材料間の接合例は未だ少なく，基礎的研究調査の必要性が高い．本研究では，アルミニウムダイキャスト材と一般構造用鋼材間の摩擦撹拌作用による接合の可能性を調査するとともに，関連するプロセス諸因子の影響解明ならびに接合諸条件の適正化を目的とした．