ソフトウェア無線機(SDR:software defined radio)の受信では,複数波を含んだ受信可能な帯域を一括してA/D変換し,ディジタル信号処理により所望の受信波を選択復調することができる.しかし高速なA/D変換器の量子化ビット数は10 bit程度であり,受信機として十分なダイナミックレンジが確保できない.そこでAGCを設けると,最も強い受信波に対してAGCが動作することとなる.このため受信レベルに大きな差がある受信波が存在した場合,弱い受信波に対するSNRが低下して良好に復調できなくなる問題がある.筆者らは上記問題を解決するため,アナログトランスバーサルフィルタを用いた時間周波敏二次元AGCを提案した.同フィルタは適応フィルタとして動作し,時間軸に加え周波数軸方向においても出力信号レベルがおおよそ一定,もしくは定められた範囲になるよう制御する.タップウエイトの適応制御は,同フィルタ出力をA/D変換後に離散フーリエ変換することで得られる信号を用いてディジタル信号処理により行う.本稿では以前報告したタップ係数更新アルゴリズムを用いて計算機シミュレーションを行い,AGCが良好に動作し受信波のダイナミックレンジが圧縮されていることを示す.
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