インタークラウドにおけるリソース性能測定方式の評価

摘要

近年，多数のクラウドが互いに連結し，動的にリソースを融通するインタークラウドが注目されている．インタークラウドに参加するクラウドは，必要に応じて他クラウドからリソースを借用することで，予備リソースの削減や大規模故障·災害への耐性など様々なメリットを得る．インタークラウドが商業的に機能するためには，当然ながら，各クラウドが連携する他クラウドのリソース性能（CPU処理速度やメモリ性能）を正確に把握できる必要がある．これまでに筆者らは，各クラウドが信憑性の高い他クラウドの性能情報を低コストで取得する方式として統計監査方式を提案した．この方式では，各クラウドが自身のリソース性能情報を連携クラウドに公開し，その情報の信憑性を他クラウドが検証する．具体的には，性能情報が偽装されていないかどうかを統計的に検定する．したがって，本方式で得られる性能情報の信憑性は，性能情報に加えられた偽装を検出する検定の精度に依存する．本研究では，2つの国内クラウド，1つの海外クラウド上で約1か月ベンチマークを実行して取得した性能情報をもとに，リソース性能の偽装に対する検定の精度を定量的に評価した．評価実験の結果，性能情報に加えられた偽装がわずかであっても（性能値を数％向上など），多くの場合その偽装を検出可能であることを確認した．また，パラメトリック検定とノンパラメトリック検定を比較し，ノンパラメトリック検定の方がより良く偽装を検出することを確認した．