社会ネットワークにおけるハブユーザ探索範囲の検討

摘要

通信サービス市場の競争が激化している昨今，企業が新しい通信サービスを世に送り出すとき，短期間でサービスを普及させることは重要な課題である．なぜなら，低コストでサービスを軌道に乗せることに繋がるからである．我々はこれまで，携帯電話のトラヒック量やSNSのユーザ数のデータに現れるべき乗則から，人間の情報交換関係に関する社会ネットワークの構造を明らかにしてきた．その結果，社会ネットワークにはハブユーザと呼ばれる情報伝搬速度に強い影響を持つユーザが存在することがわかり，マーケティングへの応用上重要性が高いと期待できる．本稿ではこの点に着目し，通信サービスの初期状態として最初に加入するユーザの次数の大小が，情報伝搬速度に与える影響を定量的に評価する．さらに，新たなハブユーザ探索モデルを提案し，ネットワーク内に存在するハブユーザの効果的な探索範囲を理論的に示す．また，同様のモデルをシミュレーションを用いて分析し，理論的な考察の妥当性を考察する．