生物学的リン除去の不安定性とモデリング

摘要

生物反応系に於ける水質変化予測の本質的困難さと現行モデルの限界が指摘されている。確かに，生物学的リン除去は，メカニズムの異なる多様な不安定化因子によって同時並行的に影響を受け，しかも細菌種が異なれば影響の受け方も異なるため，数式モデルによる表現が難しい。ポピュレーションが変化すれば尚更である。本稿で触れたように，短期間における変動の場合には，ある程度モデリングも可能であるが，長期間のモデリングにおいては現状において対応する術はない。未解明の不安定化メカニズムの解明を含め，ポピュレーションの変化をどうモデルとして取り扱っていくべきか，不安定性のモデリングにとって最も重要な課題である。特に，本稿で述べた温度に関する教訓のように，不安定化因子はGAOsに対しても作用し，その相対的な結果として生物学的リン除去性能が観察される。従って，不安定性のモデリングを適切に行うためには，既存の不安定化因子についても，再度，PAOsとGAOsに分けて詳細に検討し直す必要があると考えている。