高齢化社会と心不全―高齢者心不全の実態

摘要

心不全は欧米では非常に予後不良な疾患とされているが，日本人の心不全による死亡率は，国内の大規模臨床試験の結果からみても比較的低値である．しかし，欧米のみならず本邦でも心不全はとくに高齢者になるほど有病率と死亡率の高くなる疾患であることが知られており，心事故を合併して再入院となる確率も非常に高い．高齢者心不全が若年者と比較して特徴があるとすると，それは年齢によって疾患分布に差があること，合併する臓器障害の存在，そして治療に高齢者総合的機能評価（comprehensive geriatric assessment：CGA）の観点が必要であることの3点に基づくと考えられる．また，高齢者では心不全診断の指標となる心エコー検査の正常値や，血中BNP濃度も若年者と異なるため注意が必要である．