マルチフェーズワイヤレスセンサネットワークにおける効率的なランダム鍵事前配布方式（2）

摘要

セキュアなマルチフェーズWSNでは，センサをキャプチャする攻撃に対してネットワークを自己治癒する性質を持つ．すなわち，センサ内の鍵が断続的に攻撃者に盗まれたとしても，二者間の共有リンク鍵の漏洩率を一定に抑えることができる．例えば，RoK方式では，二者間の共有リンク鍵の漏洩率を約10％に抑えられることが報告されている．しかしながら，RoK方式を含め従来のマルチフェーズWSNにおけるランダム鍵事前配布方式では共有リンク鍵の漏洩率があまり低く抑えられていない．つまり，従来の方式ではセンサのキャプチャ攻撃に対して共有、リンク鍵の安全性が高いとは言い難い．本稿では，共有リンク鍵の漏洩率を限りなくゼロに近づけることを可能とするマルチフェーズWSNにおけるランダム鍵事前配布方式を提案する．我々の方式は，RoK方式を拡張することで共有リンク鍵の漏洩率を大幅に削減することを達成する．具体的には，RoK方式に対して多項式ベースの方式を適用することにより，各センサノードに鍵を直接格納、しないように改良する．さらに，我々は提案方式のシミュレーションによる実験値が数式モデルによる理論値とほぼ一致することを示す．したがって，我々の方式はシミュレーション実験の結果からも耐盗難性を劇的に高めた方式であるといえる．