歯科パノラマX線写真における下顎皮質骨の厚みの自動計測による骨粗鬆症のスクリーニング

摘要

歯科パノラマX線写真に描出される下顎皮質骨の厚みの減少は，骨粗髭症の危険性を示すスクリーニング指標の一つである．しかし，パノラマX線写真の撮影の目的は歯科領域の検査であり，下顎皮質骨を注視する歯科医は少ない．そこで，我々は皮質骨の異常を歯科医に示唆するコンピュータ支援診断（Computer-aided diagnosis: CAD）システムの開発に取り組んできた．本研究では，これまでに開発した手法を，複数の施設で撮影された画像に対応できるように改良を行い，より汎用性が高い下顎皮質骨の厚みの自動計測手法を開発した．提案手法では，複数の条件で下顎骨の下縁部と後縁部のエッジを抽出した．次に，動的輪郭モデルを利用して下顎骨の輪郭を推定した．最後に，計測位置から輪郭に対して垂直な直線の濃淡値プロファイルを取得し，プロファイル情報から皮質骨の厚みを決定した．本手法を適用した結果，すべての症例で正しく計測できた．また，下顎皮質骨の厚み2.8mmをしきい値として識別したとき，感度92.6％，特異度100％の結果を得た．提案手法を利用したCADシステムを臨床現場で運用した結果，骨粗鬆症の疑いを指摘することに成功し，提案手法による骨粗鬆症のスクリーニング支援が早期発見に有効である可能性が示唆された．