保安力評価システムの構築と推進

摘要

化学物質関連施設では、小事故やトラブルの増加にとどまらず、消防職員や従業員の死亡を含む火災や爆発などの重大事故も発生している。化学事故は有害物の漏洩、爆発による飛散物、火災による有害物の発生などによって周辺地域に被害が及ぶ可能性もある。一方、基幹プラントの高経年化による腐食リスクなどが増大している石油精製や石油化学の設備安全は、現場技術者の熱意や創意工夫などに支えられてきたといえる。しかし、ベテランの引退によって、現場の年齢構成が変動し、教育や技術伝承に大きな問題が生じている。現場の力を背景にした設備や運転の安全を維持するため、安全文化に基づく自主的な保安力向上が求められている。また、化学産業は複雑な設備機器を駆使して物質の多様な潜在エネルギーを制御·活用する製造施設であり、技術とその管理の仕組みの整備も重要な課題である。安全工学会はこの両者の融合を目指した、保安力評価システムを策定している。本稿ではその背景、そして保安力評価システムと保安力向上センターの取組みを紹介する。